◆更衣 九重の花のたもとをひとへには
ぬぎかへがたきなつ衣哉
実頼
◆卯花遶家 白妙の波やかけ散る玉川の
さとのめくりにさける卯の花
氏秀
◆郭公数聲 蜀魄聲々緑樹濃 遊人一聴涙無従
幾回来上同帰思 臍噬庭前栽箇松
玄劉
◆馬上聞蝉 くるゝ日を馬に任せてゆく山の
空に蝉鳴松のした道
富隆
◆沼菖蒲 おり立ちて曳袖かほる沼水の
あやめもわかぬ露の色かな
続忠
◆五月雨 日かすへてふるさみたれに小舟さす
むかひもとをしさとの中川
能元
◆瞿麥 草草の中にも分て見えぬるは
からくれなゐのなでしこの花
秀光
◆螢入簾 凉螢度竹影横斜 忽入疎簾夜色加
應是客星侵帝座 丹良一點映窓紗
兼続
◆深更鵜河 ふくる夜の月のかつらの河きしに
なかれてとをき鵜飼火のかけ
高信
◆照射 夏山のみねのともしの影見れは
ゆふやみの夜の星やいつらむ
実頼
◆百合草 夏草に露もよられてさゆりさく
すそ野の原の雨のゆふ暮
隠其
◆泉為夏栖 せきいれし水にや秋のちかからし
くるゝすみかは夏としもなし
信能
◆夏月 夏の夜の明やすき月は明のこり
巻をまゝなるこまの戸の内
利貞
◆池蓮 吹露池蓮風色加 亭々浄植玉無瑕
一枝出水清香動 本是楊妃解語花
元貞
◆家々夏秡 家家の御秡のぬさも流れては
おなし川瀬の水のしら浪
氏秀
◆風告秋使 短夜のあけぬるほとに秋きぬと
しらせて過る秋の音かな
綱忠
◆七夕 逢七夕龝天未晴 牽牛織女更多情
銀河忽被微雲掩 流水終宵白髪聲
元貞
◆野萩 をきあまり露やこほるゝ秋の野の
小萩のかれはふく風もなし
綱秀
◆刈萱乱籬 ふるさとはまかきのうちもかるかやの
みたるゝはかりふくあらしかな
家能
◆女郎花 暮ふかく立るさか野の女郎花
なまめく袖を人なとかめそ
隠其