◆元日 楊柳其賓花主人 屠蘇挙盃視元辰
迎新送旧換桃符 萬戸千門一様春
兼続
◆立春 雪ふかくふりにしさとに春たつと
あけはのかすむみよしのゝ山
綱秀
◆兼待子日 袖はへてひく野に松をのこしつゝ
又来む春の子日をぞまつ
富隆
◆霞隔行舟 煙波渺々日融々 霞隔行舟興已濃
無数帰帆看不見 櫓聲却在夕霏中
秀定
◆雲中鶯 山さとの道かすかなる雪の中に
春をしらする鶯の聲
秀景
◆蛙啼苗代 ところところ小草花さく春のひの
なはしろ水にかはつ啼なり
秀光
◆梅有遅速 わか宿の一木の梅も日のうつる
みなみの枝やまつさきぬらむ
能元
◆獨摘若菜 たちよれは澤邊にうつる水影を
友となしつゝ若菜摘也
忠廣
◆行路柳 隨風帯雨日顚狂 楊柳枝々行路傍
若是有情應繋別 絲来纔去一春恾
◆蕨未遍 朝日さす嶺のつゝきの雪消て
ところところにもゆるさわらひ
隠其
◆帰雁 帰鴈聲々只懶聞 月明影落数行群
瀟湘何事背春去 飛入塞天萬里雲
朝清
◆華未開 あらたまの春たつ日より咲ぬやと
またるゝそのゝ花はいつ見む
長賢
◆華盛 處々華開烟雨中 遊人携杖悩東風
春来忽以陽和力 開盡枝頭爛漫紅
朝清
◆欲散花 咲花もやゝ色ふかく成ぬれは
空ゆく風の音もうらめし
長朝
◆故郷桃花 たちかへり又すむ春のふるさとに
桃さくはかりむかし成けり
信能
◆松上藤 百尺藤纏萬丈松 緑陰深處影猶濃
花開千紫垂纓絡 終伴蒼髯共化龍
元貞
◆折款冬 一えたは手折てもみむ散花の
春のかたみに残るやまふき
其阿
◆樵路躑躅 山柴に岩根のつゝしかりこめて
花をきこりのおひ帰る道
利貞
◆杜若寫水 なかれゆくさはへの水にかけみへて
そこにもさけるかきつはたかな
家能
◆春月 朦朧春月半西残 起捲簾成秋色看
一鏡晴飛出霞後 暁移花影上覧干
元貞